2013/05/09

M3初参加で考えたこと

 GWも終わり、皆さまそろそろ通常営業に戻った頃と思いますが、GWはいかがお過ごしでしたか。
 私の方は、 ここ数年というもの「GWは同人誌即売会」という流れがすっかり定着してしまいまして、家族からもすでに期待されない身空となっております。 

  さて、今年は初めて、音系即売会「M3」に参加してみました。
 とにかく自分を追い込みまくる私、「今年は音楽をやる!」と決めたら即申込。なんつーか、「野球をやる!」と決めたらまだグローブも買ってないのにグランドの予約と対戦相手を探しちゃうような気の早さです。

 幸い、4月の始めから「TENORI-ON」に凝っておりまして、おかげさまで無事CDを作って頒布することができました。
 サークル参加のほうは大変楽しく、サークルさんや一般参加者の方とお話ししたり、 企業ブースで買い物したりと大変有意義な1日でありました。
 「音楽って、すばらしい!」としみじみ感じ、閉会の際はあやうく涙ぐみそうになってしまいました。
 次回もぜひ参加したいと思います。


 さて、サークル参加者としての感想はこのくらいにいたしまして、 わしも評論屋のはしくれ、ちょこっとM3の初印象などを語らせていただこうと思います。
 私が配置されたのは「フリースペース 小音量」つまり机なし椅子なし音出しOKという 、頒布よりはパフォーマンス中心のエリアでして、いわゆる「ジャンジャンバリバリ売りまっせ」的サークルホールとは別のホールであります。
 午後になり一般参加者の入場も一段落したところで、せっかくだからと私も「ジャンジャンバリバリ売りまっせ」的サークルホールのほうへ足を運んでみたわけです。

 えとー。いわゆる普通の同人誌即売会と違うなと感じたのは、ココでは「ジャンジャンバリバリ売りまっせ」は「正義である」というところですね。
 なんというか、普通の同人誌即売会では「ジャンジャンバリバリ売りたいサークル」も、お作法として「ひかえめに」ふるまうことが雰囲気として求められているような気がしますが、M3はプロ出店もOKでありまして、そうとなれば「ジャンジャンバリバリ」が正義なのは当然であります。かくして「ジャンバリ」ホールは売りたいサークルさんの熱気むんむん、ジャンバリ傾向が強い私などは、大変居心地のよろしい空間でありました。

 まあとにかく驚いたのはそのサークル数の多さ。
 コミケの同人音楽ジャンルもすごいですがココもすごい。
 会場がビックサイトより狭い分、「ジャンバリ」サークルさんの熱気でむせっかえりそうなナニでございます。

 選べない……。

 そう、人は、あんまり選択肢が多すぎると、選ぶことができないのであります。小さい即売会がなんだかんだ言っても好まれる所以はここにあります。
 サークルカタログを買おうにも「完売」でありまして、仮に買ったとしてももしかすると巨大な文字で「東方」と書かれているだけではいったいどこから手を付けていいものやら。

 さらに、「音楽」は「本」と違って、ささっとその場で良し悪しを判断することができません。せめて一分でも数分でも試聴してみないと良し悪しや自分の好みかどうかがわからない。しかし、これだけのサークルさんを全部いや半分、いやいや十分の一でも試聴するなとどいうことは不可能であります。

 つまり、M3では「事前リサーチ」および「ジャケットデザイン」が大変重要なのであります。
 
 おお神様、私は「ジャケットデザイン」の必要性を生まれて初めてしみじみと実感いたしました。
 これまで「買いたいものを決めずにレコード屋に行く」ことなどなかったので、「ジャケットデザインは『付加価値』」くらいの認識しかございませんでした。
 だけどそれだけじゃなかったんですね。「ジャケットデザイン」とは、それに収録されている音楽のレベルや、関わっているスタッフのレベルや人数、歴史など、すべてが現れます。売る気なのかそうでもないのかも。
 音楽に詳しい皆さまは既にご存じのことなのでしょうけれど、しみじみと「レコードジャケットの役割」について実感したのは私初めてであります。そしてこんなに真剣にジャケットデザインを見たのも初めてであります。

 もうひとつ、「事前リサーチ」でありますが、M3開催前に、参加サークルのみなさまが実に綿密に「事前宣伝」をしていらっしゃった理由が、会場に行って初めてわかりました。
 事前に聴いて、目星をつけておかないと、当日いきあたりばったりでは、一般参加者は気に入った音楽を探すこともできない。そして、参加サークルさんは見つけてもらうこともできない。
 これが同人誌であれば開いてさっと中身がわかりますから、いきあたりばったりでもなんとかなります。音系はそうではないから事前の宣伝が必要だし、視聴サイトも必要なのですね。

 ちなみに、M3初心者の私は、事前にサークル参加者の作品を試聴しましてびっくり。
 いやもう上手いこと上手いこと。
 しかも安い。
 同人音楽ではアルバムでも200円500円は当たり前。高いものでも1000円くらい。
 そりゃあ、街のCD屋が潰れるわけだわ。

 同人誌といえば、厚さと相場から考えて「商業本より高い」のが当たり前ですが、同人音楽はクオリティも高くて「商業作品よりはるかに安い」。
  このからくりはどこから来るのかというと、商業本の世界では「たくさん刷って安く売っていた」のに対し、商業音楽の世界では、「たくさんプレスして高く売っていた」からだと思います。ぶっちゃけて言えば後者ボロ儲け(別に悪いことではありませんけれどね。書籍やCDのような「複製商品」はたくさん作れば作るほど単価が安くなるので、たくさん作ればそれだけ儲かるわけです。売れれば)。

 価格って、「慣習」と「供給」と「需要」で決まると思うのですよ。
 例えば同じデータコンテンツでも「ホームページはタダ」なのが相場だけれど、「アプリは有料」でもみんな買うのはなぜか(有料ホームページはよほどのものでないかぎり、人気はありません)。
 それは、単に「慣習」、つまり「そういうもんだ、とみんなが思っているから」だと思います。
 今まで音楽のアルバムは2000円から3000円、シングルは1000円。「そういうもんだ」と思わせることに成功していたわけですね。

 これは想像になりますが、おそらく、レコード商品って、昔は「超高級品」だったのではないでしょうか
 蓄音機とか買えるご家庭はごくわずか。お金持ち相手だから高くてもいい。
 そーゆー「慣習」がずっと続いてきたのだと思います。

 しかしここで黒船が。
 インターネットの登場で音楽は「タダでも手に入れることができるモノ」になり(今では違法になってしまいましたけど)、技術の発達で、「誰でもやる気になれば、CD屋で販売されているモノと寸分違わぬCDが簡単で安価に作れるようになった」わけです。

 ご存じのように、レコードいやCDが流通するまでには、さまざまな流通経路をたどります。その間にどんどん値段が高くなる。
 しかし、同人音楽であれば、「つくる人が売る人」であり、書店に委託しても手数料は30%程度。商業音楽の「印税」よりはるかに率がよく、少ないプレス枚数でもかなりのお金が得られます。
 しかもレコード会社にうるさいことを言われることもない。そりゃあ、同人音楽市場が盛況になるわけですよ。売り手にも買い手にもいいことづくめだもの。

 VOCALOIDの登場と流行はその流れを決定的にしたと思います。
 有名な「歌手」に自分の作った音楽を歌わせ、人気が出たら「自分で」販売(頒布)する。それが誰でもできるんです。あなたでも、私でも。
 GW最終日にNHKラジオ第一でVOCALOIDのイベントをやっていたのですが、しみじみと「スゴい時代になった」と感じました。だって、流れている曲がほとんど「元は同人音楽」なんだもの。


 私は別に音楽業界に恨みはないので、今の音楽業界不況に「大変ですね」とは思いますが、安く素晴らしい音楽がたくさん買えるのは大歓迎であります。しかもアーティスト本人から買えて「ありがとうございます!」と言われるのですから楽しくないわけがない。
 
 もともと、音楽業界は、素晴らしいアマチュアがたくさんいるところでした。ただ、食えないからプロにならないだけで。
 今でも聞いてみると「音楽業界はやっぱり食えないところ」と言われますが、おこづかい程度なら得ることができるところになったのではないでしょうか。
 そのかわりこれまで「プロ」と言われてきた、「メジャーレーベルに所属するアーティスト」が辛くなってきた。販売店や問屋はもっと辛いでしょう。

 冷酷なようですが、リスナーにとっては、そんな業界内部のことなどどうでもいいのです。
 素晴らしい音楽が安価に聴けるのであればいい。


 M3の会場で、「ジャンバリ」サークルさんの怒濤の進撃を見ながら、私はそんなことを考えていたわけです。
 アーティストにとっての未来は明るい。
  
 次回のM3も楽しみです。 

barbara_asuka at 14:59│コラム 
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